例会 第1317回 令和7年 10月28日

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第1317回例会  鎌倉ロータリークラブ 移動例会

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卓話 「量子の世界」吉田 三知世

0. 量子の世界とは

  • 私たちの日常世界(マクロ)と異なり、電子や光などのミクロな世界では、
    エネルギーや状態は連続ではなく飛び飛び(量子化)している。
  • 粒子は「粒」にも「波」にもなる 二重の性質(二重性) を持つ。
  • さらに、一つの粒子が複数の状態に同時に存在できる 「重ね合わせ」 の性質もある。

「量子の世界」アウトライン


1. 量子力学の歴史

  1. 光の謎から始まった
    • 黒体放射の研究から プランク が「エネルギーは飛び飛びである」と提唱。
    • 光は の性質を持つと考えられていたが、アインシュタインにより 粒子(光子) としての性質も確認。
  2. 電子にも波の性質があることが判明
    • 物質全てが「粒子と波の二重性」を持つことが明らかに。
    • しかし、人間サイズの物体では波としての性質はほとんど現れない → 古典物理で説明可能。
  3. 量子力学の確立
    • 1925年 ハイゼンベルク → 電子の振る舞いを数式で記述 → 「量子力学」 と命名。(2025年はちょうど100年目)
    • 1926年 シュレーディンガー → 波としての電子を記述する 波動方程式 を発表。
    • しかし、この式が示す「波」とは一体何を意味するのか? → 議論が続く。
  4. 解釈の登場 — コペンハーゲン解釈(1927年 ボーア + ボルン)
    • 波動関数は 「存在確率」 を表す。
    • 観測した瞬間に確率の波が 一点に収縮する(波束の収縮)
    • 実用上は成功し、広く受け入れられた。
  5. しかし懐疑もあった
    • アインシュタインとシュレーディンガーはこの解釈に反対。
    • 有名な議論と例:
      • 1927年 ソルベイ会議:ボーア vs アインシュタイン
      • 1935年 シュレーディンガーの猫:重ね合わせは現実に起こりうるのか?
      • 量子もつれ:離れた粒子同士が即座に状態を共有してしまう →
        「光より速い情報伝達? 相対性理論に矛盾では?」
    • 2006年 ツァイリンガー により量子もつれは実験的に確認。

2. トンネル効果とノーベル賞

  • 古典物理では「越えられないはずの壁」を、量子粒子は 波として“しみ出す”ように通り抜けることがあるトンネル効果
  • 1959年 江崎玲於奈 が「トンネルダイオード」を発明 → 実験で確認 →
    1973年 ノーベル物理学賞
  • 2025年 ノーベル物理学賞
    • クラーク、デボレ、マルティニスの3名が 超伝導回路 を用いて、
    • トンネル効果がマクロな人工物にも起こる ことを証明。
    • → 特定の光(マイクロ波)だけを吸収する → 量子状態が実在 することを確認。

3. 現代社会と量子技術

量子力学はすでに私たちの生活の中に深く入り込んでいる。

分野量子現象の利用例
交通リニアモーターカー(超伝導 → 電気抵抗ゼロに近づく性質)
医療MRI(磁気共鳴)PET(陽電子放射断層撮影)
エネルギー・材料超伝導、半導体、レーザー
計算量子コンピュータ(現在実用化が進行中)
  • PETでは、ディラックが予測した「陽電子」が実際に発見され、それを利用してがん細胞を画像化する。

4. 未来へ — 量子AIと社会

  • 量子コンピュータの実用化が近づいている。
  • もし実現すれば:
    • 暗号、医療、材料開発、宇宙研究など 社会の根幹が大きく変化する可能性。
  • 量子力学は「役に立たないと思われていた基礎研究」が、人類の技術や社会を大きく変えた例。

2025年10月28日

吉田 三知世


例会の様子

出席報告

会員総数 出席 出席率 
33名 23名69.76%

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